ヨーロッパで、私が一番べったりじっくりお付き合いさせていただいたのが、ピ アニストのマリタさんだと思います。最初に共演したのは、シェーンベルグの” 室内交響曲”と”月憑かれたピエロ”で、オーストリア演奏旅行のときでした 。その時の印象は「ちょっと怖い、難しい人」だったのですが、その後、デュオ で来日が決まり、もう一度会って見ると、なんて情が深くて思いやりのある 方!全然印象が違いました。「シェーンベルグやってたら、精神がおかしく なったのよ。古典やロマン派はそんな事ないんだけど」と、言ってました。や っている曲に魂から集中する芸術家なのです。
マリタさんはベルリン国立歌劇場とドイチオーパーの専属ピアニスト、そして ベルリン芸術大学”ハンスアイスラー”の教授、と、凄い肩書きの方。にも関 わらず、来日は私とのリサイタルが初めてで、心から喜んで一緒に準備し ていただきました。
年代も少し違うし、ロシア節は(マリタさんはロシア人)またドイツ節ともまた 違ってもっと重々しい。CD制作の話もあり、私達は時間がある限り、お互 い通い合って、じっくり合わせをし、またお互い理解しあう努力をしました。 結果的に私が彼女のベルリンの家に泊まりこみ、マリタさんのおいしい手料 理をご馳走になりながら練習する事が多かったです。私はマリタさん御夫 婦のもとで、まるで半分家族のような存在になっていました。それなのに、 一緒に撮ったスナップが一枚もない!撮ったような気もするのに。。。
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